庄司紗矢香インタビュー&ヴィキングル・オラフソンのコメント
2020年12月13日(日)14:00開演 横浜みなとみらいホール
庄司紗矢香&ヴィキングル・オラフソン デュオ・リサイタル
この冬に、日本では実に5年半ぶりとなるリサイタルツアーを行う庄司紗矢香。しかも欧州中が注目する気鋭、ヴィキングル・オラフソンとの贅沢なデュオでの実現です。
10月17日の一般発売を前に、庄司紗矢香のインタビュー記事&オラフソンのコメントが届きました。日本の至宝ヴァイオリニストの貴重なリサイタル公演、お楽しみに!
庄司紗矢香 インタビュー
Q:いよいよ今年の12月に5年半ぶりのリサイタル・ツアーを行いますが、庄司さんは今回のデュオ・パートナーにアイスランドのピアニスト、ヴィキングル・オラフソンさんを選ばれました。庄司さんからみたオラフソンさんはどのような方でしょうか?庄司紗矢香(以下S):インテリジェントなアーティストですね。 2013年から共演をしていて、日本でのデュオ・リサイタルは今回が初めてです。インテリジェンスと抒情と21世紀の感覚が面白い具合に融合された新しいタイプのアーティストだと思います。
Q:オラフソンさんと庄司さんは既にヨーロッパでデュオを組まれたり、2018年に東京でアシュケナージ指揮NHK交響楽団とメンデルスゾーン:ヴァイオリンとピアノのための協奏曲を共に演奏されてきましたが(オラフソン氏日本デビュー)、共演していく中で彼についてどのように感じられていますか?
S:自然体でいられるパートナーですね。公演を迎えるにあたって2人でいろいろと考えてディスカッションしていくわけですが、舞台でありのままに委ねることが出来るパートナーです。
Q:ありがとうございます。それでは今回のリサイタルツァーの曲目について、それぞれの曲に関して思いを聞かせてください。
S:プログラムに関しては、演奏したい曲を素直にプログラミングしています。
J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第5番
精神的に特別に深いソナタだという見解です。その奥深さに魅かれていますし、他のソナタとは異色な曲だと感じています。
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ1番
バルトークの勉強をしていた頃から、ずっと1番のソナタを弾きたいと思っていました。
もともとバルトーク特有の民俗性や複雑な和声もありますが、それ以上にとても強い神秘性と、特に2楽章には、変容する色彩感であったり、ある種のトランスのようなものが感じられます。
プロコフィエフ:5つのメロディ
この曲は、もともと無言歌ですが、プロコフィエフ特有の色彩感に惹かれて、今回のプログラム全体をみたときに色を添えるという意味で選びました。大好きな曲です。あえて言葉はない歌。でも言葉以上に語ることが大きく、プロコフィエフのリリックなところが前面に出た傑作です。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番はこれまで私が一番長く弾いてきた曲ですが、今回は2番をぜひ演奏したい、というオラフソンの強い要望がありました。私自身も最後に演奏してから少し間があいたので、新たな気持ちで取り組む良いタイミングかな、と考えました。
一昨年位前から改めて取り組んでいる曲です。彼は私といろんな曲を演奏していた中で、彼なりの私の演奏アプローチの印象があるのでしょう。ブラームスを是非一緒に弾きたいというリクエストがありました。
ブラームスが比較的幸せな時期に書かれた曲で、未来に対する希望の入ったものだと感じます。
Q:ブラームスを長年演奏してきた中で新しい発見はありましたか?
A:演奏を重ねてきて、少しずつ自分の持っていた理想に近づいてきているということを感じます。
2番のソナタは、私が14歳か15歳の時に初めて勉強したのですが、イタリアのキジアーナ音楽院で室内楽をリッカルド・ブレンゴラ先生(イタリアのヴァイオリニスト。キジアーナ弦楽五重奏団のメンバーとして世界中で演奏活動をした)に習いに行ったときに言われたことが今でも記憶に残っています。楽譜にもその当時先生が書いてくれたことが今でもいろいろ残っていますが、「感情的には、ここはこういう意味で!」というのは、特に今になって実感できるようになったと思います。子供の頃教わったことはどこか頭の隅に残っているんですね。それが今になってやっと『こういうことが言いたかったんだな』とわかるようになりました。
Q:ありがとうございました。公演がますます楽しみになってきました。
ヴィキングル・オラフソン コメント
浜松の皆様、はじめまして。ピア二ストのヴィキングル・オラフソンです。
私の母国アイスランドではCOVID-19はまだ収まってはいませんが、少しずつ状況は良くなっています。
この新型コロナウィルスの影響は、もちろん大きく大変なものですが、ことわざで《 There is a silver lining behind every cloud.~どんな雲の後ろにも銀の裏地がついている。》とあります。どんな困難の裏にも喜びが潜んでいる、という意味)こんな中でも、私は16ヶ月の息子と妻と一緒にいる時間が増えたことに幸せを感じています。
私の初めての来日は2018年の夏にNHK交響楽団との共演でした。美しい日本の文化や日本食に大変感銘を受け、(日本食はアートだと思います!)それ以来、日本の虜になり、大好きな国となりました。また、日本で演奏して思ったのですが、とにかく日本のお客様は素晴らしい!アーティストを大変リスペクトしてくだるのを感じます。
紗矢香とは、ベルリン・デンマーク・フランス・・・世界中で何回も共演しています。ベートーヴェン、モーツァルト、ストラヴィンスキー、プロコフィエフなど、様々な作品を演奏しましたね。私が芸術監督をつとめるアイスランドの音楽祭(レイキャヴィーク・ミッドサマー音楽祭)にも出演してもらったこともありますよ。常にとても息が合った演奏ができ、同時にいつも学ぶものがあります。私はほとんどの活動がソロですが、紗矢香と共演するDUOは特別ですし、喜んで演奏しています。
私はこの日本ツアーを長い間楽しみ温めてきました。12月に皆様にお会いして、演奏を聴いていただくことが何よりも待ち遠しいです。お目にかかれることを楽しみにしていますので、それまで皆様、どうぞお元気でお過ごしください。