バーミンガム市交響楽団首席指揮者に就任した山田和樹のインタビュー

常に新しい表現を追い求める山田&バーミンガム市響の演奏に注目!

 1920年に創設されたイギリスの名門オーケストラであるバーミンガム市交響楽団(CBSO)は歴代の音楽監督に若い指揮者を抜擢し、一緒に成長するというスタイルで音楽作りをするという意欲的なオーケストラである。山田和樹は2023年4月にその首席指揮者、及びアーティスティックアドヴァイザーに抜擢された。

山田和樹
Zuzanna Specjal

「大きなきっかけは2016年にこのオケとの日本ツアーを成功させ、その後、首席客演指揮者に任命されたこと。昨年もイギリス最大の夏の音楽祭プロムスで共演し、オーケストラとの音楽的な繋がりが深まったことも大きなポイントでした」

 と山田は振り返る。

「僕はすでに40代なので、このオケの歴史からすると、首席指揮者になるにはちょっと年齢的に上だったのですが、前任者のミルガ・グラジニーテ=ティーラが子育てのためにどうしても時間が取れず、交替せざるを得ない状況のなか、カズキが居るから彼に任せれば良いじゃないかという流れになったようです」

 と今回の抜擢劇について語ってくれた。彼が考えるこのCBSOの特徴とは? の質問には、

「サイモン・ラトルをはじめ、サカリ・オラモ、アンドリス・ネルソンス、そしてティーラという歴代の音楽監督たちの音楽作りのDNAをしっかりと持ち続けていて、世界で一番、演奏するのを楽しむオーケストラと言えるでしょう。常に新しい表現を求めて、楽譜に書かれたことだけでなく、指揮者のアイディアとオーケストラのアイディアの融合を試みる団体で、いつも共演が楽しみです」

 と山田は答えてくれた。

山田和樹2
Marco Borggreve

 2023年の日本ツアーは、樫本大進(ヴァイオリン、ベルリン・フィル・コンサートマスター)とチョ・ソンジン(ピアノ、2015年ショパン国際コンクール優勝)という実力派ふたりをソリストに迎え、ラフマニノフの「交響曲第2番」とエルガーの「交響曲第1番」という大作交響曲を並べて、各地で披露する。

「エルガーはイギリスの国民的作曲家であり、日本で彼の交響曲を聴く機会は少ないと思いますが、ブルックナーに通じるスケールの大きさと精神的な深さを持った作品で、それをイギリスのオーケストラらしい深みのある音でお届けできることが嬉しいです。ラフマニノフの交響曲は昨年のプロムスでも取り上げた作品で、このオーケストラのサウンドにとても良く合った作品だと感じています。

 もちろん、ソリストのふたりは世界的なアーティストであり、特に樫本君とは何度も共演を重ねて来た間柄でもあるので、これまで以上に密度の濃いブラームスをお届けできると思います。チョ・ソンジンも素晴らしいピアニストで、彼の弾くショパンはやはり聴き逃せないでしょう」

 6年ぶりとなる山田和樹とCBSOの日本ツアーは6月23日熊本から始まり、兵庫、石川、横浜、東京、愛知などを巡る。前回以上の期待に包まれながら、山田とオーケストラの新しいコンビネーションを楽しみたい。

(片桐卓也)


2024年6月25日(日)2:00pm開演 横浜みなとみらいホール

ヴァイオリン:樫本大進
指揮:山田和樹
管弦楽:バーミンガム市交響楽団

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
ラフマニノフ:交響曲 第2番 ホ短調 Op.27

公演詳細はこちら→ 山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団

※横浜公演にはチョ・ソンジンは出演いたしません。また「エルガー:交響曲第1番」は演奏いたしません。